職場のパワーハラスメント対策
2021年12月14日作成
2022年(令和4年)4月1日施行
パワーハラスメント防止措置が事業主の義務へ
中小事業主は、2022年(令和4年)4月1日から、職場におけるパワーハラスメント防止措置が義務化されます。
※大企業は、2020年6月1日に既に義務化されています
その為、事業主としては、パワーハラスメント防止対策についての必要な措置を講じなければなりません。
〇事業主が雇用管理上講ずべき措置
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事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
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相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
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職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
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併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
この措置の内容から、事業主には、⽇頃から労働者の意識啓発など、ハラスメント防止対策の周知徹底を図る事が必要とされています。この為には、事業主からのトップメッセージを作成し、掲示すること又は朝礼などで自ら読み上げるという発信が効果的です。また、相談しやすい相談窓⼝となっているかを点検するなど職場環境に対するチェックも行ってください。パワーハラスメントは発生しない環境作りが欠かせませんから、特に未然の防止対策を⼗分に講じるようにしましょう。
パワーハラスメント防止の為、
事業主が講ずべき雇用管理上の措置の内容
〇事業主が雇用管理上講ずべき措置 その1
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事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
【取り組み方の一例】
社内報、社内ポスター、社内向けホームページ等にハラスメントの内容の分かりやすく記載します。また、ハラスメントの発生の原因や背景並びに事業主の方針を記載する事も行ってください。この様に作成した媒体を、社内の全員が目にすることができる様に配付して下さい。
ハラスメントに係る言動を⾏った者は現⾏の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適⽤の対象となる旨を明確化して、それを社内の労働者に周知・啓発して下さい。
【ポイント解説】
「事業主の方針」とは、パワーハラスメント⾏ってはならない旨のメッセージです。
「対処の内容」を文書に規定することは、ハラスメントに該当する言動をした場合に具体的にどのような対処がなされるのかをルールとして明確化し、労働者に認識してもらうことによって、ハラスメントの防止を図ることを目的としています。具体的なハラスメントに該当する言動と処分の内容を直接対応させた懲戒規定を定めることが重要です。基本的には、就業規則の改正が必要となってくると思われます。
〇事業主が雇用管理上講ずべき措置 その2
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相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること
職場におけるパワハラの発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること
【取り組み方の一例】
相談に対応する担当者をあらかじめ定めることが基本的な取り組み方です。また、事業主としては相談に対応するための制度を設けましょう。自社での対応が難しい場合は、外部の機関に相談への対応を委託することも考えてください。
相談窓⼝の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
【ポイント解説】
「窓⼝をあらかじめ定める」とは、窓⼝を形式的に設けるだけでは⾜りず、実質的な対応が可能な窓⼝が設けられていることをいいます。このためには、労働者に対して窓⼝を周知し、労働者が利⽤しやすい体制を整備しておくことが必要です。相談は⾯談だけでなく、電話、メールなど複数の方法で受けられるよう工夫しましょう。
「内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や⾏為者などに対して、⼀律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けているハラスメントの性格・態様によって、状況を注意深く⾒守る程度のものから、上司、同僚などを通じ、⾏為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すものなど事案に即した対応を⾏うことを意味します。
「広く相談に対応」とは、職場におけるハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味します。
相談に対する「適切な対応」には、いわゆる「二次被害(相談者が相談窓⼝の担当者の言動などによってさらに被害を受けること)」を防止するために必要な事項も含まれます。
〇事業主が雇用管理上講ずべき措置 その3
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職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと ⑦行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講ずること
※⑥⑦は事実確認ができた場合、⑧はできなかった場合も同様
【取り組み方の一例】
相談窓⼝の担当者、⼈事部門⼜は専門の委員会等が、相談者及び⾏為者の双方から事実関係を確認するようにして下さい。
事案の内容や状況に応じ、被害者と⾏為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と⾏為者を引き離すための配置転換、⾏為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者⼜は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずるようにして下さい。
就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるハラスメントに関する規定等に基づき、⾏為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じて下さい。
職場におけるハラスメントを⾏ってはならない旨の事業主の方針及び職場におけるパワーハラスメントに係る言動を⾏った者について厳正に対処する旨の方針、を、社内報、パンフレットに改めて掲載し、配付等して下さい。
【ポイント解説】
事実確認は、被害の継続、拡大を防ぐため、相談があったら迅速に開始しましょう。
事実確認に当たっては、当事者の言い分、希望などを⼗分に聴きましょう。
適正な解決のためには、相談の段階から、事業主が真摯に取り組むこと、⾏為者への制裁は、公正なルールに基づいて⾏うことが重要です。
これまでの防止対策に問題がなかったかどうか再点検し、改めて周知を図りましょう。
〇事業主が雇用管理上講ずべき措置 その4
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併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
【取り組み方の一例】
相談者・⾏為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓⼝の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応する様にして下さい。
就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に、労働者が職場におけるハラスメントの相談等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発して下さい。
【ポイント解説】
職場におけるハラスメントの事案についての個⼈情報は、特に個⼈のプライバシー保護に関連する事項ですから、事業主は、その保護のために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に周知し、労働者が安心して相談できるようにする必要があります。
労働者が実質的にハラスメントの相談等をしやすくするために、ハラスメントの相談等を理由とする不利益な取扱いされない旨を定め、労働者に周知・啓発することが必要です。基本的には就業規則の改正が必要です。
事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されました。
今般改正された労働施策総合推進法、男⼥雇⽤機会均等法及び育児・介護休業法においては、労働者がハラスメントについて相談を⾏ったこと⼜は事業主による相談対応に協⼒した際に事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いが、法律上も禁止をされました。
事業主は、労働者からの「自⾝がハラスメント被害で困っている」、「職場でハラスメントが起こっている」等の相談に対して誠実に対応し、不利益な取扱いを⾏ってはなりません(※)。
これは、労働施策総合推進法におけるパワーハラスメントの雇⽤管理上の措置を講じることが努⼒義務である中小事業主の場合でも同様です。
また、派遣労働者も対象に含まれるものであり、派遣元のみならず、派遣先も、派遣労働者が相談を⾏ったこと等を理由として、当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒む等、不利益な取扱いを⾏ってはなりません。派遣先は、派遣元と協⼒しつつ、誠実に対応を⾏いましょう。
※言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者らの相談も対象です。
事業主及び労働者の責務
以下の事項に努めることが、事業主・労働者の責務として法律上明確化されました。
【事業主の責務】
■職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題(以下「ハラスメント問題」という。)に対する労働者の関心と理解を深めること
■その雇用する労働者が他の労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
■事業主自身(法人の場合はその役員)がハラスメント問題に関する関心と理解を深め、労働者(※)に対する言動に必要な注意を払うこと
【労働者の責務】
■ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者(※)に対する言動に注意を払うこと
■事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること
※取引先等の他の事業主が雇用する労働者や、求職者も含まれます。
法令の各要素の構成(まとめ)
パワーハラスメントについて事業主の対応が必要となる防止措置を、法令上の関連要素の構成を図解して、イオン社労士事務所で作成したものです。
参考資料として、ご覧下さい。
イオン社労士事務所にてサポート致します。
この度のパワーハラスメント防止措置への対応は、事業主様単体では、非常に困難であると想像できます。
何故なら、そもそもパワーハラスメントという概念が比較的新しく、まだ、多くの方に明瞭には認識されていない状況に有るかと思われます。その上で、防止措置への取り組みを行う事は、スタートしようとする時点で既に非常に高いハードルとなってしまいます。
また、これまでの労務管理上、ハラスメントに関する対応は、労働時間・賃金といった要素に比べ、取り組みが後回しになっている実情が有ると思われます。
イオン社労士事務所では、2021年12月現在、既存のお客様を対象に、15社程度の事業主様へ、この職場のパワーハラスメント対応のサポートを行わせて頂きました。
既に、サポートに必要なツールはイオン社労士事務所に準備してあります。
法改正の影響はもちろんですが、時代の流れにより、事業主は職場のハラスメント対策も求められる事となりました。イオン社労士事務所は、社会保険労務士として、各事業所の職場のパワーハラスメント対応をサポートさせて頂きます。
研修用テキスト
※既にサポート対応を行わせて頂いた事業所さま向け
厚生労働省の作成した研修用テキストとなります。
管理職向け、労働者向けとそれぞれ用意されていますので、必要なものをこちらからダウンロードの上、ご活用ください。
なお、赤字部分は、各事業所ごとに編集して使用する様になっております。この編集作業は、厚生労働省WEBサイトに有りますパワーポイント形式ファイルをダウンロードする事で可能です。当事務所のお客様には、この編集作業は、当事務所にて行ないますので、ご依頼ください。